宅建試験令和2年度(10月)問2
下記ケース①及びケース②の保証契約を締結した場合に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- (ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
- (ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
- ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
- ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
- ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
- 保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
宅建試験令和2年度(10月)問2の正解は「4」です。
このページでは、宅建試験令和2年度(10月)問2を詳しく説明します。

宅建試験令和2年度(10月)問2の正解と各選択肢の正誤
宅建試験令和2年度(10月)問2の正解は「4」です。
選択肢4が正しく、その他は誤りです。本問では、民法の「保証債務」について、保証・連帯保証・根保証の異同がとわれています。やや細かい条文知識も必要です。
| 選択肢 | 正誤 | 必要知識 |
|---|---|---|
| 選択肢1 | ×(誤り) | 保証契約は、根保証であるか否かにかかわらず、必ず書面または電磁的記録が必要 |
| 選択肢2 | ×(誤り) | 極度額の定めが必須となるのは、個人根保証契約 |
| 選択肢3 | ×(誤り) | 催告の抗弁が認められるのは通常保証人。連帯保証人に催告の抗弁は認められない |
| 選択肢4 | ○(正しい) | 公正証書によって保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示しなければいけないのは、事業のために負担した債務を主たる債務とする保証契約(または、事業のために負担する債務が含まれる債務を主たる債務とする根保証契約)を締結する場合 |
正しいのは選択肢4であるため、正解は「4」です。
選択肢1:×(誤り)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢1
ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
保証契約には、必ず書面または電磁的記録が必要です(民法446条2項、3項)。口頭で締結しても、保証契約の効力は生じません。
①②契約ともに、口頭ですることはできません。また、②契約は、電磁的記録ですることもできるので、書面に限られません。
したがって、選択肢1は誤りです。
選択肢2:×(誤り)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢2
ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
極度額を必ず定めなければならないのは、個人根保証契約です(民法465条の2第1項、2項)。
①契約は、特定された債務を主たる債務としているので、根保証契約ではありません。他方、②契約は、賃貸借契約に基づく一切の債務という不特定な債務を主たる債務としているため、根保証契約に当たります。
そうすると、①契約は、Cが個人・法人いずれでも個人根保証契約にはならないので、極度額の定めは不要です。
他方、②契約は、Eが個人であれば個人根保証契約となり、極度額の定めが必要ですが、Eが法人の場合は個人根保証契約ではないので、極度額の定めは不要です。
したがって、選択肢2は誤りです。
選択肢3:×(誤り)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢3
ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
催告の抗弁が認められるのは、通常の保証人です(民法452条本文)。連帯保証人には、催告の抗弁は認められません(民法454条)。
ケース①②契約ともに連帯保証契約である場合、連帯保証人C・Eはいずれも催告の抗弁を主張することはできません。
したがって、選択肢3は誤りです。
選択肢4:◯(正しい)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢4
保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
公正証書によって保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示しなければいけないのは、事業のために負担した債務を主たる債務とする保証契約(または、事業のために負担する債務が含まれる債務を主たる債務とする根保証契約)を締結する場合です(民法465条の6第1項)。
①契約は、主たる債務が事業資金の借入れであり、事業のために負担した債務であるため、保証人Cの公正証書による事前の意思表示がなければ効力を生じません。
②契約は、主たる債務が事業に関わるものではないので、Eの公正証書による事前の意思表示がなくても有効です。
したがって、選択肢4は正しいです。
詳細解説:本問を解くための前提知識
宅建試験令和2年度(10月)では、保証契約に関する知識が問われています。
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
各選択肢を詳細解説する前に、まずは、ケース①契約と②契約を確認しましょう。
保証契約と連帯保証契約
保証人とは、主たる債務者が債務を履行しない場合に、代わりに債務を履行する責任を負う人のことです(民法446条1項)。保証人が負う債務を保証債務といいます。
連帯保証人とは、主たる債務者と連帯して債務を負う保証人です(民法454条)。連帯保証人が負う債務は、連帯保証債務と呼ばれます。
保証債務や連帯保証債務は、主たる債務の契約とは別に、債権者と保証人・連帯保証人が契約を結ぶことによって発生します。この契約を、保証契約・連帯保証契約といいます。
保証人は、主たる債務者が弁済しない場合に、補充的に責任を負います。これに対して、連帯保証人は、補充ではなく、主たる債務者と同じ責任を負います。
保証契約と根保証契約
上記のとおり、通常の保証か連帯保証かは、保証人が主たる債務者と連帯して責任を負うか否かの区別です。
一方、根保証とは、一定範囲に属する不特定な債務を主たる債務とする保証のことです。保証人が個人である場合の根保証のことを、個人根保証といいます。保証と根保証は、主たる債務が特定されているか否かの区別です。
このように、保証・連帯保証の区別と保証・根保証の区別は別の問題です。そのため、根保証である通常保証もあれば、根保証である連帯保証も存在します。
ケース①の契約:根保証ではない
ケース①で締結されている契約は、「個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約」です。
1000万円の貸金債務という特定された債務を保証する契約であるため、根保証ではありません。
ケース②の契約:根保証に該当する
ケース②で締結されている契約は、「個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約」です。
建物賃貸借契約に基づく一切の債務という、一定の範囲における不特定の債務を保証しているため、根保証に該当します。
選択肢1の詳細解説:×(誤り)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢1
ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
選択肢1では、保証契約に書面が必要か否かが問われています。
書面による契約の必要性は特定保証でも根保証でも同じ
保証契約であるか根保証契約であるかを問わず、すべての保証契約は、書面または電磁的記録でしなければ効果を生じません(民法446条2項、3項)。口頭ですることはできません。
「保証契約は全部書面(または電磁的記録)が必要」と覚えておきましょう。
したがって、「ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効である」とする部分が誤りです。
なお、電磁的記録を書面と別のものと考えるならば、書面以外でも電磁的記録による契約は可能であるため「ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない」とする部分も誤りになります。
民法 第446条
- 第1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
- 第2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
- 第3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
引用元:e-Gov法令検索
選択肢2の詳細解説:×(誤り)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢2
ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
極度額とは、保証人が責任を負う上限額のことです。本選択肢では、極度額の定めの要否に関する保証契約も根保証契約の違いが問われています。
根保証でない保証契約では極度額の定めは不要
まず、根保証でない通常の保証契約(特定保証)では、極度額の定めは不要です。
根保証でない保証契約の場合、保証しなければならない債務の範囲が特定されています。保証人は、最悪の場合いくらまで保証しなければいけないのかを把握して契約できます。
そのため、保証契約では、極度額を定めなくても効力を生じます。
本問の①契約は根保証ではないため、Cが個人・法人いずれの場合であっても、極度額を定めなくても有効です。
根保証契約の場合は保証人が個人か法人かで異なる
根保証契約の場合は、保証人が個人であるか法人であるかによって、極度額の要否が異なります。
根保証契約は、債務が不特定であるので、極度額を決めないと、無限定に保証債務が拡大してしまうリスクがあります。いかに契約しているとはいえ、このような無限定なリスクを一個人に負わせるのは問題です。
そこで、個人が根保証契約の保証人となる「個人根保証契約」の場合には、個人の保証人を保護するため、極度額の設定が必須とされています(民法465条の2第1項、2項)。
一方、保証人が法人である場合には、個人の場合ほどの保護の必要性がありません。法人根保証契約では、極度額を定めていなくても、効力が発生します。
②契約は、「賃貸借契約に基づく一切の債務」という不特定な債務を主たる債務とする根保証契約です。そのため、Eが個人である場合は個人根保証契約となり、極度額の定めをしなければ効力を生じません。
他方、Eが法人の場合は個人根保証ではないので、極度額の定めをしなくても契約は有効です。
民法 第465条の2
- 第1項 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
- 第2項 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
- 第3項 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。
引用元:e-Gov法令検索
選択肢2の結論
したがって、「ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はない」とする部分は正しいです。
しかし、「ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない」とする部分が誤りであるため、選択肢2は誤りです。
【一歩進んで】連帯保証だった場合
例えば、上記のケース①・②の契約が連帯保証契約であった場合はどうなるでしょうか?
答えは、「連帯保証の場合も、結論は変わらない」です。連帯保証であっても、個人根保証でない限り、極度額の定めは不要です。
連帯保証であっても、保証すべき債務が特定されている以上、予想できないほどの負担を生じるおそれがないからです。
「極度額の定めが必要になるのは、保証でも連帯保証でも個人根保証契約だけ」と覚えておきましょう。
選択肢3の詳細解説:×(誤り)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢3
ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
選択肢3では、催告の抗弁に関する通常保証と連帯保証の違いが問われています。
催告の抗弁とは、債権者から請求された場合に、まず主たる債務者に請求するよう主張して弁済を拒める保証人の権利のことです。
簡単にいうと、催告の抗弁とは、「まず先に主たる債務者に請求してくれ」と債権者に求めることができる保証人の権利です。
催告の抗弁は連帯保証人には認められない
催告の抗弁が認められるのは、通常の保証人です(民法452条本文)。連帯保証人には、催告の抗弁が認められていません(民法454条)。
保証契約は、主たる債務者が支払なかった場合に代わりに支払いをするための補充的な契約です。債務の支払いをすべき第一次的な義務は、主たる債務者にあります。
そのため、保証人は、まず主債務者に請求するよう求めることが可能です。
一方、連帯保証契約は、保証とはいえ、主債務者と連帯し、同等の責任を負担しています。補充的な責任ではないので「まず主たる債務者から」とは言えないのです。
民法 第452条
- 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
民法 第454条
- 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
引用元:e-Gov法令検索
選択肢3の結論
選択肢3ではケース①もケース②も連帯保証であるため、どちらも催告の抗弁は主張できません。
したがって、「BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができる」とする部分が誤りです。
【一歩進んで】検索の抗弁
催告の抗弁権と一緒に、検索の抗弁権についても確認しておきましょう。
検索の抗弁権とは、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明することによって、債権者からの保証債務の履行請求を拒絶できる保証人の権利です(民法453条)。
前記の催告の抗弁によって債権者が主たる債務者に請求したものの支払いがなかったため、再び保証人に請求した際でも、保証人は検索の抗弁によって請求を拒めます。
この検索の抗弁権も催告の抗弁権と同じです。保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権も認められますが、連帯保証人には両方とも認められません。
「連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権も両方とも認められない」ことを覚えておきましょう。
民法 第453条
- 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
引用元:e-Gov法令検索
選択肢4の詳細解説:◯(正しい)
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
選択肢4
保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
選択肢4は、「保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示」しなければならないのはどのようなケースなのかについて問われています。
公正証書による保証の意思表示
公正証書とは、公務員である公証人が作成する公文書です。公正証書は、誰でも公証役場で公証人に依頼して作成してもらうことが可能です。
事業のために負担した債務を主たる債務とする保証契約(または、事業のために負担する債務が含まれる債務を主たる債務とする根保証契約)を締結する場合、保証人となろうとする人が事前に保証債務を支払う意思を明らかにしていることが求められます。
具体的には、保証契約締結前1か月以内に、保証人となろうとしている人が保証債務を履行する意思を表示する公正証書を作成していることが必要です(民法465条の6第1項)。
事業のための債務は、大きな金額になることが多いです。当然、保証人の負担も軽くありません。
そこで、保証人が大きな負担を被る覚悟が本当にあるのかを確認するとともに、保証人となろうとする人にも熟慮する機会を与えるため、公正証書による事前の意思表示が必要とされているのです。
民法 第465条の6
- 第1項 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
引用元:e-Gov法令検索
公正証書による意思表示が不要となる保証人
上記のとおり、事業債務を保証する場合には、保証人となろうとする人が、公正証書により事前の意思表示をしなければなりません。
ただし、保証人が主たる債務者の共同事業者や、事業に従事している主たる債務者の配偶者である場合は、公正証書による事前の意思表示が不要とされています(民法465条の9第3号)。
民法 第465条の9
- 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。
- 第3号 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
引用元:e-Gov法令検索
選択肢4の結論
本問ケース①の契約は、主たる債務が事業資金の借入れです。また、保証人Cは「Aの事業に関与しない個人」であるため、共同事業者や事業に従事している配偶者でもありません。そのため、公正証書による保証の意思表示が必要になります。
一方、ケース②の契約は、Aが居住目的のためにした賃貸借契約に関する債務が主たる債務です。事業のための債務ではありません。そのため、公正証書による保証の意思表示は不要です。
したがって、「ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じない」とする部分も、「ケース②の保証契約は有効である」とする部分も正しいです。
補足:本問ケース①契約と②契約の比較
本問におけるケース①契約と②契約を比較すると、以下のようになります。
| 比較項目 | ケース①契約 | ケース②契約 |
|---|---|---|
| 保証の種類 | 根保証ではない | 根保証に該当 |
| 書面の要否 | 書面(または電磁的記録)が費用(口頭では契約できない) | 書面(または電磁的記録)が必要(口頭では契約できない) |
| 極度額の定め | 不要 | 保証人Eが個人である場合(個人根保証)は必要 法人である場合は不要 |
| 催告・検索の抗弁 | 通常保証であれば「あり」 連帯保証であれば「なし」 | 通常保証であれば「あり」 連帯保証であれば「なし」 |
| 公正証書による事前の意思表示の要否 | 保証人CがAの事業に関与しない個人である場合は、必要 | 不要 |
本問で覚えておくこと
宅建令和2年度(10月)問2では、保証債務に関し、個人根保証や事業債務の保証など、若干細かい条文の知識が問われています。
もっとも、宅建士の実務では保証契約も頻繁に関わるため、本問で出題された程度の知識は、せっかくですので覚えておきましょう。
- 保証契約はすべて、書面(または電磁的記録)が必要
- 極度額の定めが必須になるのは、個人根保証契約
- 催告の抗弁・検索の抗弁が認められるのは通常の保証契約のみ(連帯保証契約では認められない)
- 事業のための債務を主債務とする保証契約には、保証人となろうとする人が、契約前1か月以内に、公正証書で保証債務を履行する意思表示をする必要がある
- 保証人となろうとする人が、主たる債務者の共同事業者または主たる債務者の事業に従事する配偶者である場合は、公正証書で保証債務を履行する旨の意思表示をする必要はない
関連する過去問
本問とあわせて、保証債務に関する他の過去問も解いてみましょう。
- 宅建試験令和2年度(10月)問7
原状回復の保証・主債務に生じた影響・保証人の求償権の制限 - 宅建試験令和7年度問2
書面の要否・催告の抗弁・極度額の定めの要否・債権者の情報提供義務
保証債務については、他の資格試験でも出題されています。
- 行政書士試験令和6年度問31
保証人の要件・主債務に生じた影響・保証債務の範囲


