この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
宅建試験令和6年度問1
法律行為に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 営業を許された未成年者が、その営業に関する意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合は、その法律行為は無効である。
- 公の秩序に反する法律行為であっても、当事者が納得して合意した場合には、その法律行為は有効である。
- 詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。
- 他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。
宅建試験令和6年度問1の正解は「1」です。
このページでは、宅建試験令和6年度問1をわかりやすく説明します。

宅建試験令和6年度問1の正解と各選択肢の正誤
宅建試験令和6年度問1の正解は「1」です。
正しいものは選択肢1です。宅建試験令和6年度問1は「法律行為の無効(および取消し)」に関する基礎知識を問う問題です。
| 選択肢 | 正誤 | 必要知識 |
|---|---|---|
| 選択肢1 | ○(正しい) | 意思能力がない者がした法律行為は、無効 |
| 選択肢2 | ×(誤り) | 公序良俗に違反する法律行為は絶対的に無効であり、追認しても有効にはできない |
| 選択肢3 | ×(誤り) | 詐欺・強迫による意思表示は、当然に無効になるわけではなく、取り消すことができるものとなる |
| 選択肢4 | ×(誤り) | 他人物売買も契約として有効であるため、追認する必要はない |
正しいものは選択肢1であるため、正解は「1」です。
選択肢1:◯(正しい)
選択肢1
営業を許された未成年者が、その営業に関する意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合は、その法律行為は無効である。
営業を許された未成年者であったとしても、意思能力を有しない者がした法律行為は無効です(民法3条の2)。
したがって、選択肢1は正しいです。
選択肢2:×(誤り)
選択肢2
公の秩序に反する法律行為であっても、当事者が納得して合意した場合には、その法律行為は有効である。
公序良俗に反する法律行為は、絶対的に無効です(民法90条)。当事者の合意があっても有効にはできません。
したがって、選択肢2は誤りです。
選択肢3:×(誤り)
選択肢3
詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。
詐欺・強迫ともに、当然に意思表示が無効となるわけではなく、取り消しうるものとなります(民法96条1項)。
したがって、選択肢3は誤りです。
選択肢4:×(誤り)
選択肢4
他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。
他人が所有する物を目的物にした売買契約(他人物売買)も、契約として有効です(民法561条)。
したがって、選択肢4は誤りです。
詳細解説:本問を解くための前提知識
宅建試験令和6年度問1で問題となっているのは「法律行為」の効力です。各選択肢を詳細に解説する前に、基礎知識を確認しておきましょう。
法律行為とは
法律行為は、意思表示を要素とする行為です。意思表示とは、権利の発生・変更・消滅といった法律効果の発生を望む意思(効果意思)を外部に表示する行為です。
法律行為とは、意思表示に基づいて、法律効果を生じさせる行為です。法律行為の代表例は、契約です。
例えば、売買契約は、買主の目的物を買いたいとする申込みの意思表示と、これを受け入れる旨の売主の承諾の意思表示が合致することによって成立する法律行為です。
法律行為の無効と取消し
法律行為が「無効」である場合と「取消し」ができる場合は、同じではありません。
無効な法律行為は、はじめから効力がありません。他方、取消しができる法律行為は、当然に無効となるわけではなく、取り消されるまでは一応有効なものとして存在します。
取り消し得る法律行為は、取り消されてはじめて無効になります。あえて取り消さずに追認して、完全に有効なものとすることも可能です。
「無効な法律行為」と「取り消しうる法律行為」は、異なるものであると覚えておきましょう。
選択肢1の詳細解説: ◯(正しい)
選択肢1
営業を許された未成年者が、その営業に関する意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合は、その法律行為は無効である。
選択肢1は、やや「ひっかけ問題」です。
一見すると、未成年者の行為能力が問題になっているように勘違いしてしまいそうですが、本問を解く鍵は「意思能力」です。
意思能力を欠く者の法律行為は無効
意思能力とは、自分が行為したことによりどのような結果が発生するのかを認識・判断できる精神的な能力のことです。
この意思能力を有しない人がした法律行為は、未成年者であっても成年者であっても、すべて無効です(民法3条の2)。
そのため、未成年者の行為能力を考えなくても、意思能力を有していない以上、法律行為は無効です。
したがって、「法律行為は無効である」とする選択肢1は正しいです。
民法 第3条の2
- 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
引用元:e-Gov法令検索
補足:未成年者の行為能力
上記のとおり、本選択肢の正誤を判断するのに未成年者の行為能力を考える必要はありません。しかし、せっかくの機会ですので、未成年者の行為能力についても押さえておきましょう。
行為能力とは、単独で確定的に有効に法律行為を行える能力のことです。この行為能力を制限されている人のことを「制限行為能力者」といいます。
18歳未満の未成年者は、制限行為能力者とされています(民法4条、5条1項本文)。未成年者は、たとえ意思能力があっても、単独で法律行為をすることができず、法定代理人(親権者、未成年後見人)による代理や同意が必要となるのが原則です。
ただし、以下の法律行為は、未成年者が単独で行えます。
- 単に権利を得るか義務を免れるだけの法律行為(民法5条1項ただし書き)
- 法定代理人が目的を定めて処分を許した財産について、目的の範囲内で処分する法律行為(民法5条3項前段)
- 法定代理人が目的を定めず処分を許した財産を処分する法律行為(民法5条3項後段)
- 営業主に許可された一種または数種の営業について行う法律行為(民法6条1項)
選択肢2の詳細解説:×(誤り)
選択肢2
公の秩序に反する法律行為であっても、当事者が納得して合意した場合には、その法律行為は有効である。
選択肢2では、「公序良俗違反」が問題になっています。
公序良俗に反する法律行為は絶対的に無効
公序良俗とは、公の秩序・善良な風俗のことです。この公序良俗に違反する法律行為は、「絶対的に無効」です(民法90条)。
無効な行為は追認しても有効にはできません。また、公序良俗違反である以上、民法119条によって新たな行為をしたものとみなされることもありません。
したがって、「法律行為は有効である」とする選択肢2は誤りです。
民法 第90条
- 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
引用元:e-Gov法令検索
補足:無効な法律行為の転換
追認とは、効力を欠く法律行為を有効なものとして認めることです。大前提として、「無効」な法律行為は追認しても有効にはできません(民法119条本文)。追認で有効にできるのは、取り消し得る行為だけです。
ただし、無効な法律行為であると知りながら追認した場合は、新たな法律行為をしたものとしてみなされます(民法119条ただし書)。無効行為の転換と呼ばれています。
例えば、虚偽表示による法律行為であっても、当事者が追認すれば法律行為を有効にできます。
しかし、前記のとおり、公序良俗に違反する法律行為を追認しても、有効にならないだけでなく、新たな法律行為をしたものとみなされることもありません。
民法 第119条
- 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
引用元:e-Gov法令検索
選択肢3の詳細解説:×(誤り)
選択肢3
詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。
選択肢3では、詐欺取消しと強迫取消しの違いについて問われています。
詐欺・強迫による意思表示は取り消しうる
詐欺とは、人を欺いて錯誤に陥らせることにより意思表示をさせる行為です。「騙す」のが詐欺です。他方、強迫とは、害悪の告知や暴行により人を畏怖させて意思表示をさせる行為です。「脅す」のが強迫です。
詐欺・強迫いずれの場合も、意思表示が当然に無効になるわけではありません。詐欺・強迫による意思表示は「取り消す」ことができるものになります(民法96条1項)。
したがって、「強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である」とする選択肢3は誤りです。
民法 第96条
- 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
引用元:e-Gov法令検索
補足:取消しの効果
無効な法律行為は、はじめから効力がありません。他方、取り消し得る法律行為の場合は、取り消されるまでは一応有効です。
ただし、取り消し得る法律行為も、取り消されると、法律行為をした時に遡って無効になります(遡及効。民法121条)。
無効と取消しは異なるものですが、取り消された場合の最終的な効果はともに「はじめから無効」になる点では同じです。
民法 第121条
- 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
引用元:e-Gov法令検索
選択肢4の詳細解説:×(誤り)
選択肢4
他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。
選択肢4は、「他人物売買」の基礎知識を問う問題です。
他人物売買は契約として有効
他人物売買とは、他人の物や権利を目的物として売買することです。この他人物売買も、契約として有効です(民法561条)。
他人物売買は、そもそも有効なので、追認の必要もありません。契約した後に売主が目的物の所有権などを取得して、買主に移転させればよいだけだからです。
したがって、「他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効である」とする選択肢4は誤りです。
民法 第561条
- 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
引用元:e-Gov法令検索
本問で覚えておくべき知識
宅建試験令和6年度問1では、「法律行為」や「意思表示」についての基礎知識が問われています。宅建試験でも、法律行為や意思表示は定期的に出題されています。
最低限、以下のことは覚えておきましょう。
- 意思無能力者がした法律行為や意思表示は無効
- 公序良俗に違反する法律行為や意思表示は、絶対的に無効
- 詐欺による意思表示も強迫による意思表示も、当然に無効ではないが、取消しができる
- 他人物売買も、契約として有効
関連する過去問
法律行為や意思表示は、以下でも出題されています。あわせて解いてみましょう。
- 宅建試験令和7年度問1
論点:民法177条の第三者・契約解除と第三者・強迫取消しと第三者など - 宅建試験令和7年度問3
心裡留保の効力・虚偽表示と第三者・錯誤の効力・詐欺取消し前の第三者


