行政書士試験令和3年度問27の正解と解説【過去問】意思表示の効力

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行政書士試験令和3年度問27

意思表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。
  2. 契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。
  3. 契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。
  4. 意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。
  5. 意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

引用元:一般財団法人行政書士試験研究センターサイト

行政書士試験令和3年度問27の正解は「2」です。

このページでは、行政書士試験令和3年度問27を詳しく説明します。

行政書士試験令和3年度問27の正解と解説
  1. 行政書士試験令和3年度問27の正解と各選択肢の正誤
    1. 選択肢1:×(妥当でない)
    2. 選択肢2:○(妥当である)
    3. 選択肢3:×(妥当でない)
    4. 選択肢4:×(妥当でない)
    5. 選択肢5:×(妥当でない)
  2. 詳細解説:本問を解くための前提知識
    1. 意思表示とは
    2. 意思表示の効力発生時期:意思表示の「到達」とは
  3. 選択肢1の詳細解説:×(妥当でない)
    1. 選択肢1前段①:相手方が到達を妨げた場合は到達が擬制される
    2. 選択肢1前段②:相手方が受領拒絶した場合は到達が擬制される
    3. 選択肢1後段
    4. 選択肢1の結論
  4. 選択肢2の詳細解説:◯(妥当である)
    1. 選択肢2前段:公示による意思表示の可否
    2. 選択肢2後段①:公示による意思表示の到達擬制
    3. 選択肢2後段②:表意者に過失がある場合
    4. 選択肢2の結論
  5. 選択肢3の詳細解説:×(妥当でない)
    1. 前提:契約の成立
    2. 意思表示の到達と発信
    3. 補足:意思表示の到達主義と発信主義
  6. 選択肢4の詳細解説:×(妥当でない)
    1. 前提:制限行為能力者とは
    2. 選択肢4前段:表意者が意思表示を発した後に行為能力を喪失した場合
    3. 選択肢4後段:契約申込者が申し込み後に行為能力を喪失した場合
      1. 意思表示後の行為能力の制限と契約の申込み
      2. 成立していない契約は取り消せないことに注意
    4. 選択肢4の結論
  7. 選択肢5の詳細解説:×(妥当でない)
    1. 被保佐人や被補助人には意思表示の受領能力がある
  8. 本問で覚えておくべき知識
    1. 意思表示の受領能力がない者【一覧表】
  9. 本問に関連する過去問

行政書士試験令和3年度問27の正解と各選択肢の正誤

行政書士試験令和3年度問27の正解は「2」です。

選択肢2が妥当です。本問では、「意思表示の効力」に関する条文知識が問われています。細かい知識も問われているため、やや難易度は高いです。

選択肢正誤必要知識
選択肢1×(妥当でない)・相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる
・意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合であっても、相手方が通知の内容を推知できるときは、留置期間が満了した時点で意思表示が到達したと判断されるケースがある
選択肢2○(妥当である)・意思表示は、意思表示をする人(表意者)が相手方を知ることができず、または相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことが可能
・公示の方法で意思表示をした場合、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる市区町村役場等での掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に意思表示が到達したものとみなされる
・表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合、公示による意思表示をしても、到達の効力は生じない
選択肢3×(妥当でない)・契約の承諾の意思表示は、相手方に到達しなければ効力を生じない
選択肢4×(妥当でない)・意思表示は、表意者が通知を発した後に行為能力を喪失したとしても、意思表示の効力は妨げられない
・契約の申込者が契約の申込みの意思表示をした後に制限行為能力者になった場合、契約の相手方が承諾の通知をする前に申込者が制限行為能力者になったことを知ったときは、その意思表示は効力を生じない
選択肢5×(妥当でない)・意思能力を欠く者には意思表示の受領能力がない
・被保佐人・被補助人には意思表示の受領能力がある

選択肢1:×(妥当でない)

選択肢1
意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。

相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(民法97条2項)。

この「意思表示の通知が到達することを妨げたとき」には、相手方が通知の受領を拒絶した場合も含まれると考えられます。

また、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合であっても、相手方が通知の内容を推知できるときは、留置期間が満了した時点で意思表示が到達したと判断されるケースがあります(最高裁判所第一小法廷平成10年6月11日判決)。

したがって、選択肢1の前段は妥当ですが、後段が妥当ではありません。

選択肢2:○(妥当である)

選択肢2
契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。

意思表示は、意思表示をする人(表意者)が相手方を知ることができず、または相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことが可能です(民法98条1項)。

公示の方法で意思表示をした場合、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる市区町村役場等での掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に意思表示が到達したものとみなされます(民法98条3項本文)。

ただし、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合、公示による意思表示をしても、到達の効力は生じません(民法98条3項ただし書)。

したがって、選択肢2は妥当です。

選択肢3:×(妥当でない)

選択肢3
契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。

契約の承諾の意思表示は、相手方に到達しなければ効力を生じません(民法97条1項)。そのため、承諾の意思表示を発信した時に契約が成立することはありません。

したがって、選択肢3は、妥当ではありません。

選択肢4:×(妥当でない)

選択肢4
意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。

意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でも、意思表示の効力は妨げられません(民法97条3項)。

また、行為能力がある状態で意思表示をした後に制限行為能力者になったとしても、その意思表示は原則として有効です。

しかし、契約の申込者が契約の申込みの意思表示をした後に制限行為能力者になった場合は、契約の相手方が承諾の通知をする前に申込者が制限行為能力者になったことを知ったときは、その意思表示は効力を生じません(民法526条)。

したがって、選択肢4は、妥当ではありません。

選択肢5:×(妥当でない)

選択肢5
意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

意思無能力者、未成年者、成年被後見人には、意思表示の受領能力がありません(民法98条の2本文)。これらの人が意思表示を受領しても、表意者はその意思表示をもって対抗できません。

ただし、制限行為能力者であっても、被保佐人や被補助人には、意思表示の受領能力があります。相手方が被保佐人や被補助人であった場合、表意者はその意思表示をもって相手方に対抗できます。

したがって、選択肢5は、妥当ではありません。

詳細解説:本問を解くための前提知識

本問で問われているのは、「意思表示」に関する基礎知識です。特に、意思表示の効力の発生に関する知識が問われています。

各選択肢を検討する前に、まずは本問を解くための前提知識を確認しておきましょう。

意思表示とは

意思表示とは、法律効果の発生・変動・消滅を望む意思を表示する行為です。契約などの法律行為をする場合の基礎となるのが、意思表示です。

例えば、契約は、当事者の「申し込みの意思表示」と「承諾の意思表示」が合致してはじめて成立します(民法522条1項)。

売買契約であれば、売主の「甲不動産を1億円で売りたい」とする申し込みの意思表示と、買主の「甲不動産を1億円で買いたい」とする承諾の意思表示が合致した時に、契約として成立します。

いずれか一方でも意思表示が欠けていれば、契約は成立しません。

意思表示の効力発生時期:意思表示の「到達」とは

意思表示は、原則として相手方に「到達」した時に効力を生じます(民法97条1項。なお、例外はあります。)。

意思表示の「到達」とは、相手方にとって了知可能な状態に置かれたこと(意思表示の書面が相手方の勢力範囲・支配権に置かれること)を意味します(最高裁判所第一小法廷昭和36年4月20日判決など)。

そのため、意思表示をしても、相手方の支配権に届いていなければ、到達したとは言えず、意思表示は効力を生じません。

民法 第97条

  • 第1項 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

引用元:e-Gov法令検索

最高裁判所第一小法廷昭和36年4月20日判決

「思うに、隔地者間の意思表示に準ずべき右催告は民法九七条によりB自動車に到達することによつてその効力を生ずべき筋合のものであり、ここに到達とは右会社の代表取締役であつたEないしは同人から受領の権限を付与されていた者によつて受領され或は了知されることを要するの謂ではなく、それらの者にとつて了知可能の状態におかれたことを意味するものと解すべく、換言すれば意思表示の書面がそれらの者のいわゆる勢力範囲(支配圏)内におかれることを以て足るものと解すべき」

引用元:裁判所サイト

選択肢1の詳細解説:×(妥当でない)

選択肢1
意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される。これに対して、意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない。

選択肢1は、意思表示の「到達」についての知識を問う問題です。

選択肢1前段①:相手方が到達を妨げた場合は到達が擬制される

意思表示は、原則として相手方に「到達」した時に効力を生じます(民法97条1項)。

しかし、相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(民法97条2項)。これを「到達擬制」といいます。

したがって、選択肢1の「意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ」とする部分は妥当です。

民法 第97条

  • 第2項 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

引用元:e-Gov法令検索

選択肢1前段②:相手方が受領拒絶した場合は到達が擬制される

前記のとおり、相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものと擬制されます。

相手方が正当な理由なく受領を拒絶した場合も、「意思表示の通知が到達することを妨げたとき」に含まれると考えられます。

したがって、「相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される」とする部分も妥当です。

選択肢1後段

選択肢1後段では、内容証明郵便による意思表示の通知書か、相手方に現実には届いていません。また、不在による還付であり、意図的に意思表示の到達を妨げたとまではいえません。

ただし、前記のとおり、相手方が現実に受領していない場合であっても、相手方が意思表示の内容を推知でき、それほどの労力をかけなくても意思表示の通知を受け取れる状況にあったときには、相手方の了知可能な状態に置かれ、意思表示が到達したと判断されることがあります。

内容証明郵便の場合、相手方が不在のため受領されなかった場合でも、すぐに差出人に還付されるわけではなく、一定期間郵便局で保管・留置され、相手方はその期間内であれば受領可能な状態に置かれます。また、内容証明郵便は受け取り方法を指定できます。

そのため、相手方が内容証明郵便による通知の内容を推知できる場合は、受け取り方法の指定によって受領することにさほどの困難もないため、社会通念上、相手方の了知可能な状態に置かれ、遅くとも郵便局での留置期間が満了した時点で相手方に意思表示が到達したものと認めることができると考えられています(最高裁判所第一小法廷平成10年6月11日判決)。

したがって、「意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない」とする部分は妥当ではありません。

最高裁判所第一小法廷平成10年6月11日判決

前記一の事実関係によれば被上告人は、不在配達通知書の記載により、小川弁護士から書留郵便(本件内容証明郵便)が送付されたことを知り(右(二)(2)参照)、その内容が本件遺産分割に関するものではないかと推測していたというのであり、さらに、この間弁護士を訪れて遺留分減殺について説明を受けていた等の事情が存することを考慮すると、被上告人としては、本件内容証明郵便の内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができたというべきである。また、被上告人は、本件当時、長期間の不在、その他郵便物を受領し得ない客観的状況にあったものではなく、その主張するように仕事で多忙であったとしても、受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって(右(二)(3)参照)、さしたる労力、困難を伴うことなく本件内容証明郵便を受領することができたものということができる。そうすると、本件内容証明郵便の内容である遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、被上告人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で被上告人に到達したものと認めるのが相当である。

引用元:e-Gov法令検索

選択肢1の結論

以上のとおり、「意思表示の相手方が、正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされ、相手方が通知の受領を拒絶した場合には意思表示の到達が擬制される」とする選択肢1前段は妥当です。

しかし、「意思表示を通知する内容証明郵便が不在配達されたが、受取人が不在配達通知に対応しないまま留置期間が経過して差出人に還付され、通知が受領されなかった場合には、意思表示が到達したものと認められることはない」とする後段が妥当ではありません。

よって、選択肢1は妥当ではありません。

選択肢2の詳細解説:◯(妥当である)

選択肢2
契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる。この場合、当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされるが、表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない。

選択肢2は、「公示による意思表示」の知識が問われています。

選択肢2前段:公示による意思表示の可否

意思表示は、相手方を知ることができない場合や所在を知ることができない場合、公示の方法によってすることができます(民法98条1項)。

公示の方法とは、裁判所の掲示板に意思表示の内容を掲示し、かつ、掲示があったことを官報(国の機関誌)に掲載または市区町村役場等の施設の掲示板に掲示して意思表示を行う方法のことです(民法98条2項)。

したがって、「契約の取消しの意思表示をしようとする者が、相手方の所在を知ることができない場合、公示の方法によって行うことができる」とする部分は妥当です。

民法 第98条

  • 第1項 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
  • 第2項 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

引用元:e-Gov法令検索

選択肢2後段①:公示による意思表示の到達擬制

公示による意思表示をした場合、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる市区町村役場等での掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされます(民法98条3項本文)。

したがって、「当該取消しの意思表示は、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に相手方に到達したものとみなされる」とする部分も妥当です。

民法 第98条

  • 第3項 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

引用元:e-Gov法令検索

選択肢2後段②:表意者に過失がある場合

公示による意思表示は、どうしても相手方の所在がわからない場合の最終手段です。たいして所在調査もせずに公示による意思表示を利用することはできません。

そのため、意思表示をする人(表意者)に、相手方の所在を知ることができないことに過失がある場合は、公示による意思表示をしても到達の効力は生じません(民法98条3項ただし書)。

したがって、「表意者に相手方の所在を知らないことについて過失があった場合には到達の効力は生じない」とする部分も妥当です。

選択肢2の結論

以上のとおり、選択肢2は前段・後段ともに妥当です。

選択肢3の詳細解説:×(妥当でない)

選択肢3
契約の申込みの意思表示に対して承諾の意思表示が郵送でなされた場合、当該意思表示が相手方に到達しなければ意思表示が完成せず契約が成立しないとすると取引の迅速性が損なわれることになるから、当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する。

選択肢3は、意思表示の効力発生時期に関する知識を問う問題です。

前提:契約の成立

契約は、当事者の「申込みの意思表示」と「承諾の意思表示」が合致したときに成立します(民法522条1項)。

例えば、売買契約であれば、売主の目的物を100万円で売りたいとする申込みの意思表示と、買主の100万円でその目的物を買いたいとする意思表示が互いに相手方に到達すると、契約が成立します。

当事者の一方が申込みの意思表示をしたものの、相手方が承諾の意思表示が到達しなかった場合には、契約は成立しません。

民法 第522条

  • 第1項 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

引用元:e-Gov法令検索

意思表示の到達と発信

前記のとおり、意思表示は相手方に「到達」した時に効力を生じるのが原則です(民法97条1項)。契約における申込みの意思表示も承諾の意思表示も、相手方に到達しなければ効力を生じません。

かつては、隔地者間の意思表示について発信した時に効力を生じるとする規定がありましたが、民法改正により廃止されました。現行法では、申し込みの意思表示も承諾の意思表示も到達しなければ効力を生じないことに統一されています。

そして、承諾の意思表示が効力を生じない以上、契約が成立することもありません。

したがって、「当該承諾の意思表示が発信された時点で契約が成立する」とする選択肢3は妥当ではありません。

補足:意思表示の到達主義と発信主義

前記のとおり、意思表示は相手方に「到達」した時に効力を生じるのが原則です。

ただし、一定の意思表示については、相手方に届いた時(到達時)ではなく、意思表示を発信した時に効力が生じるものがあります。

到達時に意思表示の効力が発生するとの考え方を「到達主義」といい、発信時に効力が発生するとの考え方を「発信主義」といいます。

民法改正(2020年4月1日施行)により、民法上の意思表示はすべて到達主義に統一されました。民法における意思表示は、すべて到達主義と考えておいて問題ありません。

ただし、例えば、消費者契約法や特定商取引に関する法律(特定商取引法)におけるクーリングオフなどのように、特別法では発信主義がとられていることはあります。

選択肢4の詳細解説:×(妥当でない)

選択肢4
意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けないが、契約の申込者が契約の申込み後に制限行為能力者となった場合において、契約の相手方がその事実を知りつつ承諾の通知を発したときには、当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる。

選択肢4では、制限行為能力者が意思表示を受け取った場合と意思表示をした場合の効力について問われています。

前提:制限行為能力者とは

行為能力とは、単独で確定的に法律行為を行う能力のことです。この行為能力が制限されている人のことを制限行為能力者といいます。

具体的に言うと、以下の人が制限行為能力者とされています(民法4条以下)。

制限行為能力者
  • 未成年者:18歳未満の人
  • 成年被後見人:家庭裁判所において後見開始の審判を受けた人
  • 被保佐人:家庭裁判所において保佐開始の審判を受けた人
  • 被補助人:家庭裁判所において補助開始の審判を受けた人

制限行為能力者が単独で法律行為をした場合、取り消されることがあります。

選択肢4前段:表意者が意思表示を発した後に行為能力を喪失した場合

意思表示は、表意者が通知を発した後に行為能力を喪失した場合でも、意思表示の効力は妨げられません(民法97条3項)。

例えば、表意者が意思表示の通知を発した後に後見開始の審判を受けて成年被後見人となったとしても、意思表示が取り消されることはありません。

したがって、「意思表示は、表意者が通知を発した後に制限行為能力者となった場合でもその影響を受けない」とする部分は妥当です。

民法 第97条

  • 第3項 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

引用元:e-Gov法令検索

選択肢4後段:契約申込者が申し込み後に行為能力を喪失した場合

選択肢4後段は、前段とは逆に、意思表示をする側の問題です。

意思表示後の行為能力の制限と契約の申込み

前記のとおり、表意者が意思表示を発した後に制限行為能力者となったとしても、意思表示の効力は妨げられません。

ただし、契約の申し込みの意思表示に関しては、例外があります。契約の申込者が申込みの意思表示をした後に制限行為能力者になった場合、以下のいずれかのケースでは、その申込みの意思表示は効力を失います(民法526条)。

契約の申込者が制限行為能力者になった場合
  • 申込者が制限行為能力者になったとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき
  • 相手方が承諾の通知を発するまでに表意者が制限行為能力者になったことを知ったとき

選択肢4後段では、相手方は、承諾の通知をする前に表意者が制限行為能力者になったことを知っています。そのため、申込みの意思表示は効力を失い、契約は成立しません。

民法 第526条

  • 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

引用元:e-Gov法令検索

成立していない契約は取り消せないことに注意

上記のとおり、選択肢4後段の場合、申し込みの意思表示が効力を生じないため、契約は成立しません。

契約の取消しができるのは、一応契約が有効に成立している場合です。そもそも契約が成立していないのであれば、契約を取り消すことはできません。

したがって、「当該制限行為能力者は契約を取り消すことができる」とする部分は妥当ではありません。

選択肢4の結論

以上のとおり、選択肢4は、前段・後段ともに妥当ではありません。

選択肢5の詳細解説:×(妥当でない)

選択肢5
意思表示の相手方が、その意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき、または制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。

選択肢5では、意思表示の受領能力が問題になっています。

被保佐人や被補助人には意思表示の受領能力がある

意思能力とは、自分がした行為の結果として、権利や義務にどのような変動が生じるのかを判断できる能力のことです。

この意思能力を欠く人(意思無能力者)には、未成年者や成年被後見人と同様、意思表示の受領能力がありません(民法98条の2)。

しかし、前記のとおり、制限行為能力者であっても、被保佐人や被補助人には、意思表示の受領能力があります。被保佐人や被補助人に対して意思表示をすれば有効となり、その意思表示を被保佐人や被補助人に対抗できます。

したがって、「制限行為能力者であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない」とする選択肢5は妥当ではありません。

本問で覚えておくべき知識

行政書士試験令和3年度問27では、意思表示の効力が問われています。

細かい条文知識の問題であるため、初見で間違ってしまったとしてもやむを得ないです。しかし、過去問は完璧にしておくのが資格試験の鉄則です。

この機会に、もう一度条文を確認した上で、以下の知識は最低限覚えておきましょう。

本問で覚えておくべき知識
  • 意思表示は、相手方に到達した時に効力を生じる(到達主義)のが原則
  • 相手方が意思表示の通知が到達するのを妨げた場合(意図的に受領を拒絶した場合も含む)、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる
  • 相手方が内容証明郵便による通知を受領しなかった場合でも、その通知の内容を推知できるときは、社会通念上、相手方の了知可能な状態に置かれ、遅くとも郵便局での留置期間が満了した時点で相手方に意思表示が到達したものと判断されることがある
  • 表意者が、相手方を知ることができず、または相手方の所在を知ることができない場合は、公示の方法で意思表示をすることができる
  • 公示による意思表示をした場合、最後に官報に掲載した日またはその掲載に代わる市区町村役場等での掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる
  • 相手方の所在を知らないことについて表意者に過失がある場合は、公示の方法で意思表示をしても到達の効力は生じない
  • 契約は、申し込みの意思表示と承諾の意思表示が合致したときに成立する
  • 表意者が意思表示を発した後に行為能力を喪失したとしても、意思表示の効力は妨げられない
  • 契約の申込者が申し込みの意思表示をした後に制限行為能力者になった場合、承諾の意思表示をする前に、申込者が制限行為能力者になったことを承諾者が知ったときは、その申し込みの意思表示は効力を生じない
  • 未成年者や成年被後見人には意思表示の受領能力はないが、被保佐人や被補助人には意思表示の受領能力がある
  • 意思無能力者には、意思表示の受領能力がない

意思表示の受領能力がない者【一覧表】

意思表示の受領能力については、以下の点を覚えておきましょう。

相手方受領能力
意思能力を欠く者(意思無能力者)なし
未成年者なし
成年被後見人なし
被保佐人あり
被補助人あり

本問に関連する過去問

意思表示に関しては、行政書士試験でも以下のような出題があります。

また、意思表示に関しては、他の資格試験でも出題されています。

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